大きな石の町とは南米ペルーの町クスコのこと。クスコはインカ帝国の首都でもありました。
その昔、北アメリカのインディアンたちは中央アメリカのマヤ族・アステカ族と交易していたことがわかっています。
もっと広い世界を見てみたいと、中にはずっと南まで旅したインディアンもいたことでしょう。アンデス山脈までたどり着いた彼は、初めて見る大都市に目を見張ったにちがいありません。
長い旅を終えて帰った彼は子孫に話しました。
「そこは道も家もすべて大きな石でできていて、人はみんな虹のように色とりどりの服を着ていた。私がその町にたどり着いたとき、ちょうどお祭りだった。大きな広場に大勢の人が集まって踊っていた。額飾りや首飾りが太陽のようにきらきらと美しかった。あれはたしかこんな曲だったか…」
ちなみに彼が見たのは羊飼いの踊りです。 » 原曲はこんなの。
…うろ覚えなのでずいぶん違った曲になっています。
映画や小説の主人公の生きざまは、私たちに勇気を与えてくれます。波瀾万丈の人生、次から次へと襲いかかる絶体絶命の危機。厳しい運命に怯まず立ちむかう彼ら彼女らの姿は、私たちに生きる勇気を奮い起こさせます。
…でも、
その勇気は実は、あんまり役に立ちません。日本に暮らす多くの人にとって人生は平穏で、かわりばえのない毎日がえんえんと死ぬまで続くものです。「世の中つまんないぜ!」なんて知ったふうに吐きすてる人がいますが。それこそが人生です、身にしみて分かれ。私たちの闘いは、この平穏でつまらない人生をけっして見限らないこと。かわりばえのない日常に踏みとどまること。
なーんて、こっ恥ずかしいテーマですがインディアンフルートならさまになります。胸を張り、高らかに、直球ど真ん中どうどうと演奏しましょう。おおきく二つのフレーズでできていて演奏サンプルではそれぞれ二回ずつくりかえして吹いています。単純な曲なので装飾音やビブラートでごてごてに飾りたててください。
「シラカバ林、ビーバーの住処、オオシカの群れさまよう、緑濃い水のほとり…」
今は遠くにある故郷を想い、いつか帰るという決意をうたった歌。
母から教わった歌、というのはタイトルではなくて本当に私が母から教わったという意味で。小学生のころだったか、母が帰宅するなり「てっちゃんインディアンの歌を教えてやる」と有無を言わさず覚えさせられた歌です。「なぜ突然にインディアン」と頭上に??を浮かべながら暗唱したのを子どもながらに覚えています。
私が知っている中で一番インディアンらしい歌、つまり「日本人がイメージするインディアンの歌」に聞こえます。これ本当にネイティブ・アメリカインディアンの歌なんでしょうか、日本人が作曲したんじゃないかと疑っています。たとえば地元の演劇の劇中歌を母が聞いて覚えて帰った、という状況がしっくりきます。
今となってはほんとうはわかりません。
簡単な曲ので覚えるのは楽だと思いますが。同じ音がつづくので装飾音を入れる、強く息を吹きこんで音をひずませる、ビブラートをかけるなどして飽きさせないように演奏します。
ネイティブラブフルートの製作者ステッペンデルビィがデモムービーをYouTubeにアップしました。遅い、もっと早くそうすべき。今日日いい物を作っているだけじゃだめです、しっかり宣伝しないと。
美しいスライドは工房の近くの自然―ヨセミテ―で撮影したものです。つまり工房はヨセミテ国立公園のすぐそばなわけで、なんとうらやましいロケーションでしょう。
そしてBGMはもちろんインディアンフルートです。工房で製作しているいろいろなフルートをとっかえひっかえ吹いています。ぱあっと視界がひらけるような明るい曲です。こういう曲想ってありなんですね。
気がつきました?
ありえない音域をやすやすと吹いたフルートが一本まざっていました。すっごく気になります。
庭芝のうえで子どもたちが遊んでいるのを見ていると、ふと、トウモロコシ畑で働いていた父の背中が目に浮かぶ。俺はこのシカゴでちょっとした技師になった。家庭も持ったが、ホームは今もあの青い空の下の金色に輝くトウモロコシ畑なのさ…みたいな歌。
簡単なゆっくりした曲です、一音一音を大切に。長くのばす音は基本的にだんだん大きくしながらビブラートをかけます。試聴サンプルよりも、もうすこしのんびり吹いた方がよいかもしれません。
●…指穴を押さえる ○…指穴をあける ※グレイアウトは音を出さない
ダブルフルートのための小さな曲です。
ピンで和音を奏でるダブルフルートは鳴らすだけでインパクト十分ですから、簡単な曲でもそこそこ聴けます。とは言え短い曲をそのまま4回も繰りかえすとさすがに飽きますから、いろいろ小細工して吹いています。
原曲はアンデス地方の古い曲。
そのせいか北米というより中南米の雰囲気がします。なんて考えながら演奏していると、装飾音の入れ方までなんだかケーナっぽくなってしまって。
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» 『聖マリアの七つの喜び』をインディアンフルートで吹いてみました
『The Seven Joys of Mary(聖マリアの七つの喜び)』はアイルランドの古いキャロルです。
歌詞とメロディーにはいろんなバージョンがあって、これはドネゴール郡に伝えられているもの。
アイルランドの音楽は5音階に収まる曲が多く、インディアンフルートとの相性もわるくありません。特にこの曲は和音を奏でるダブルフルートの魅力を最大限に引きだしてくれます。
フルートはダブルフルート(2本のインディアンフルートが1本になった笛)を使います。
写真のように、非常に特殊な使い方をします。
伴奏管のいちばん下の指穴は、右手小指で押さえるのがいいでしょう。
運指については上のプリントアウト用の楽譜をご覧ください。
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» 『土器のウサギ』をインディアンフルートで吹いてみました
ダブルフルートのための練習曲です。『土器のウサギ』という意味ですが、タイトルは適当につけました。
この曲を演奏するには、ダブルフルートの伴奏管の指穴をぜんぶコルク栓でふさいでしまいます。てみる屋で販売しているダブルフルートにはコルク栓をつけていますからそれを使えばいいです。ちなみに私は百円ショップで買ったスポンジの耳栓を半分の長さに切ってつめています。こっちのほうが指穴を痛めないかなと思いまして。みっともないですけど。
伴奏管はいつも同じ音を鳴らして、左右の両手はメロディー管を演奏することに専念します。要はふつうに吹けばいいです。
この曲は、最初にメロディー管だけ吹いて次に伴奏管もいっしょに吹いて、またメロディー管だけ吹いて…を繰りかえします。北米のゴスペルでよく聴くコールアンドレスポンス形式です。これはダブルフルート向き、なかなかさまになって聞こえます。
●…指穴をとじる ○…指穴をあける ※ グレイアウトは吹かない
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» 『Father's back in the corn field』をダブルフルートで吹いて見ました
以前にご紹介したインディアンフルートの曲『Father's back in the corn field』をダブルフルート向けにアレンジしました。メロディーに伴奏を付けました。っても伴奏音は二つしかありませんから(どっちが合うかな?)程度で決めましたけど。
フルートはダブルフルート(2本のインディアンフルートが1本になった笛)を使います。
写真のように、非常に特殊な使い方をします。
伴奏管のいちばん下の指穴は、右手小指で押さえるのがいいでしょう。
運指については上のプリントアウト用の楽譜をご覧ください。
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» 岩塩の教会をモハーヴェの笛で吹いてみました
モハーヴェの笛は、北米カリフォルニア半島北方を流れるモハーヴェ川のインディアンたちが1800年代半ばまで吹いていた笛です。木管に4つの指穴を開けただけの簡単な構造で、尺八やケーナのように管の縁を吹いて鳴らします。音階は「ラシドレミ」、黄昏のような暗い雰囲気の音です。
コヨーテオールドマンが復元しました。
モハーヴェの笛のために用意した曲です。タイトルは適当。原曲はペルーの山村の小さな教会で歌われていた賛美歌です。原曲…というよりもほとんどそのままで、メロディーのモハーヴェの笛に合わない箇所をちょこっといじっただけ。
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» Red River Valley をアナサジフルートで吹いてみました
『Red River Valley』 (邦題『赤い河の谷間』)は北アメリカのゴールドラッシュの頃の古い歌です。元々は砂金を求めてレッドリバーにやってきた白人男たちとネイティブ・インディアンの娘との恋と別れの歌。
日本では北アメリカ西部の美しい自然を謳った歌として、あるいは故郷の西部を懐かしむ歌として知られています。私の世代は小学校の音楽の時間に習いました、今はどうなんだろう。
笛は古代アナサジフルートを使っています。アナサジフルートは北アメリカアリゾナ州のアナサジ洞窟遺跡から発掘された1400年前の古い笛です。
試聴サンプルの音はアーストーンフルート工房の製作によるB管のアナサジフルート。これは日本の女性向けにわざわざ開発したもので、手のひらの小さな人でも扱いやすいサイズです。また音も出しやすい。
楽譜はGキーで書いています。そうしないと音符が五線の真ん中あたりに収まらないという理由でそうしています。まあどんなキーのアナサジフルートでも運指表のとおりに吹けばいいです。
"Wherever You Go"は、インディアンフルート奏者ブライアン・アキパの曲です。CD『The Flute Player』から。彼のインディアンフルート演奏はネイティブな雰囲気を残しつつ、魅力的なメロディーで聴きやすい。私は彼の演奏の多く学びました。
そのままブログにアップすると著作権に引っかかるので、動画にしてYouTubeにアップしました。同じ理由で楽譜や運指表を掲載することができません。
モハーヴェの笛で演奏しています。
モハーヴェの笛は、北米モハーヴェ河流域のインディアンたちが1800年頃まで吹いていた縦笛です。北米古代フルートの復元に力を注いでるコヨーテオールドマンが、2007年に発表しました。
尺八のように管の縁を吹いて鳴らす素朴な笛です。指穴は4つ、音階は"ラシドレミ"。誰がどう吹いても黄昏のような哀しい雰囲気になってしまいます。逆にこの限られた音の中で、少しでも明るい雰囲気の演奏ができないかと、私はときどきチャレンジします。
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» 『冬の星座』をホピの笛で吹いてみました
堀内敬三作詞の『木枯らし途絶えて…』から始まる唱歌。私が中学生の頃には音楽の教科書に載っていました。原題は『Mollie Darling』(愛しのモーリー)。「モーリー愛しているよ世界でいちばん君が好きさっ。あっふん好き好きさーっ。」という脳天気な歌です…知らなきゃよかった。『麦畑』もそうですけど、犬も食わない恋の歌に格調高い詩をつけて導入した日本唱歌って多いですよね。
ホピの笛は北米インディアンのホピ族に伝わる縦笛。20世紀半ばまで演奏されていたと伺っています、(今でも祭事に吹いているという話です。)商品として製作しているのは今のところ北米のコヨーテ・オールドマンだけ。コンサートフルートよりも大型の笛ですが、指穴の位置が変則的なので、女性でも無理なく押さえることができるでしょう。尺八やケーナと同じく管の縁を吹いて鳴らすタイプなので習得に鍛錬が必要です。
ドローンフルートで『アメイジング・グレイス』を演奏してみました。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる縦笛です。男性が好きな女性にプロポーズするとき歌を捧げる風習から、 ”ラブフルート” とも呼ばれています。ドローンフルートはインディアンフルートの改造版で、通常のメロディー管の横に伴奏管が付いています。同時に二つの音が出る、一人で合奏できる仕組みです。
これは一般的には ”ダブルフルート” と呼ぶのですが、ナッシュは伴奏管に指穴の無い一つの音しか出ないタイプを ”ドローンフルート” 、伴奏管にも指穴のあるタイプを ”デュエットフルート” と呼んでいます。マヤ・アステカのクレイフルートを製作するナッシュは、同様にすばらしいインディアンフルートを製作します。このたび世界楽器てみる屋に卸していただけることになったので、その記念として演奏しました。
イーグル・ボーン・ホイッスル(鷲の骨の笛)は、死んだ鷲の翼の骨をくりぬいて指穴をあけた笛です。イーグル・ボーン・ホイッスルでジブリ音楽『もののけ姫』を吹いてみました。
運指も載せています、必要であれば動画を一時停止して見てください。
長さは14cm、小さな笛です。鷲がなくような甲高い、哀愁のこもった音がします。北米のインディアンたちはこの笛を、儀式や狩りの合図に、あるいは仕事の合間の楽しみに吹いたのでした。
リコーダーやオカリナと同じで吹けば鳴ります。今一つ不正確なピッチを息の強弱でコントロールしながら演奏するあたりも、オカリナによく似ています。音階はインディアンフルートと同じ音階――ラドレミソラド――なので、高い音のインディアンフルートと思って演奏すればいいです。そもそも最初はふつうのインディアンフルートで試聴サンプルを作りはじめたのですが、あいにく原曲のイメージに合うような高い音のフルートがなくて、代わりに試しにイーグル・ボーン・ホイッスルを使ってみたらぴったりでした。
本物の鷲は絶滅危惧種で、捕らえることはおろか見かけることすら稀になりました。だからこれは実は、陶器製のレプリカです。強い材質ではないので、落とすとペキっと逝きます。下げ紐を首から下げて使ってください、もともとアクセサリです。っても見かけは骨ですから、人間様よりもむしろ犬小屋のワンちゃんに似合いそうで……これは……ファッションを選びます。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。男性が好きな女性にプロポーズするとき歌を捧げる風習から、ラブフルートとロマンチックに呼ばれたりしています。
インディアンフルートでジブリ映画 『もののけ姫』 のテーマ曲を吹いてみました。
ナッシュ・タベワという職人の製作したF#管のインディアンフルートで演奏しました。細身で、かちっとした音色です。ブロックに付いているバッファローの彫刻がかわいいです。
インディアンフルートの運指は、著作権使用料の支払い義務を回避するためにYouTube動画の中でスライドショーしています。動画を一時停止して確認してください。
基本、どこのメーカーのどんなキーのインディアンフルートでも同じ運指です、が。強く吹いて鳴らす2オクターブ目の高い音がメーカーによって微妙に異なります。自分のフルートをどうやって吹けばいいのかは、購入したお店に確認してください。
CDの曲をBand-in-a-boxに読み込ませてコード進行を逆算させ、自動演奏させた結果をmidiファイルに出力し、録音したフルートの音といっしょにSONARでアレンジ・ミックスダウンしました。
作業環境は、動画を観てのとおりふつうの家の一室です。国道やJRから離れた静かな場所ではありますが、生活ノイズはそれなりで、録音したフルートの音がざーざーと汚れてしまうのはどうしょうもない。ノイズリダクションの使用が必須になります。私はiZotopeRXを使っています。高価なソフトウェアですが、楽器の音をほとんど損なうことなくノイズを根こそぎにクリーンしてくれます。
私の音楽製作作業に於いて、自動伴奏のBand-in-a-boxとノイズリダクションのiZotopeRXは要です。SONARは作業速度がアップし、完成した作品のクオリティがプロレベルまで高くなるため重宝していますが、必須ではありません。やれと言われれば代わりにフリーソフトでも仕事できます、したいとは思いませんが。
ムービー製作はVideoStudio Ultimate X3を使っています。デジタルレコーダーとハンディビデオカメラを同時に回して録音・録画して、あとで音と画像のタイミングを合わせています。VideoStudio Ultimate X3は…ぱっとしません。ムービー製作で必要なことはとりあえず出来ますよ、というレベル。だから問題なく使えることは使えます。
北米インディアンの笛で映画『The last of the Mohicans』(モヒカン族の最後)のメインテーマを演奏しました。
私は自分のことをエンジニア(技師)だと思っています。
私は音楽家ではないし楽器の演奏家でもありません。私の仕事の内容は新商品の発掘と調査、販売企画と実施、使い方をブログで説明したりと、これは音楽家や演奏家の仕事ではないでしょう。私の体感としては、今やってることはコンピュータ会社に勤めていた頃の業務と大差ないです。これはエンジニアの仕事です。
インディアンフルートはそれを取りまく文化の影響で、スピリチュアルな感性と相性がよいです。実際、そういうお客さんが多いです。しかしながら私はその手の話ができないので、いつも申し訳ない応対をしています。あるいはインディアンフルートの縁起として伝えられるロマンチックな逸話があって、なんと絵本になってますけど。ぜんぜん興味ありません、なので読まないし話の詳細も知りません。「演奏が上手になるわけでもないのに、なんでそんなことを知りたいの?」というのが私の率直な感想です。
私の世界は物理的です。
私は楽しんで楽器を演奏しますが、楽器は音にしか興味がないし演奏にしか興味がありません。私にとって楽器はポータブルゲームマシンと同様のモノです。なるほど初音ミクのProject DIVAなど音ゲーは、パーカッションを叩くのとよく似た楽しさを味わえます。またレーシングゲームの楽しさは笛を吹く楽しさに通じるものがあります。
私は楽器を真剣に演奏しますが、心を込めて演奏はしません★ 。
そのような心のこもっていない演奏でも、こうして動画にしてみると、我ながらそこそこ聞けるではありませんか。そのことはむしろ救いだと思うのですよ。「演奏の善し悪しはすべて技術で説明できる」という立場だからこそ、どんな人でも習得しさえすれば楽器を演奏できるようになると、救いの手をさしのべることができると思うのです。
★ 心を込めて演奏しない
そもそも認知学やコミュニケーション論の立場からすると、楽器の演奏――楽器の奏でる音に心をこめることは不可能です。音に心はこもりません。だから音楽教室の講師が生徒に対して「もっと心をこめて演奏して」といった類いのアドバイスするのは、月謝をもらって食ってる身分にしては、あまりに不勉強で横着な態度だと、私は思います。
厳密には「心を込めて演奏する」ではなくて「心のこもった演奏に聞こえるように演奏する」が正しいです。確かにこちらなら、具体的なやり方さえ学べば実践可能でしょう?単なる言い回しの違いにしか聞こえない?、違いがよくわからない?、という人もいると思いますが……これらの二つは天と地ほども違います。
「心のこもった演奏に聞こえるように演奏する」は、楽器演奏の奥義の一つです。これから楽器演奏を始める初心者にぜひ理解させたい事柄です。
1人で合奏ができるダブル・インディアンフルートです。
『聖母マリアの7つの喜び』を演奏しました。
運指は動画を一旦停止しながらご確認ください。
» カラオケ音源を用意しました、使ってください。
『聖母マリアの七つの喜び』は古い歌なので、メロディーの異なるバージョンが存在します。私が初めて聞いたのはアイルランドのドネゴール郡に伝わるバージョンでした。静かで神聖な雰囲気の曲で、一発で気に入りました。しかしながら世間で知られているのはむしろ、スィング気味の脳天気な曲調のバージョンです。それを知っている人は(なんでこんな曲をインディアンフルートで吹くのだろう?)と敬遠するかもしれません……今回は非常に損な選曲をしてしまいました。
七つの喜び、ということはご明察のとおり、1番から7番まで歌があります。とはいえ笛で同じフレーズを7回もくりかえすとさすがに飽きるでしょうから、4番までしか演奏してません。
アステカ族の末裔、ナッシュ・タベワが製作したダブル・インディアンフルートで演奏しています。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。ダブル・インディアンフルートはそれの改造版で、2本の笛を1本に束ねた笛です。同時に2つの音を出せるので1人で合奏ができます。石器・土器しかなかった昔のインディアンたちがこんなゴツい笛を吹いていたはずもない。ダブル・インディアンフルートは高い工業技術によってのみ製作可能な、20世紀末に生まれた新しい楽器です。
……なんて堅苦しいことを言わずに、吹いてみると意外にこれがインディアンな雰囲気なのですよ。インディアンフルートを嗜む人なら(一本は欲しいな)と憧れる楽器です。
『聖母マリアの七つの喜び』の運指は演奏動画に載せています。一時停止しながらご確認ください。
左側の管は、6つの指穴ぜんぶを使います。レザーバンドは外してください。右手側の管は、下の2つの指穴しか使いません。3つあるうちのいちばん上の穴は、耳栓で塞ぎます。
動画を見てのとおり、右手で左右両側の管の指穴をいっしょに押さえる箇所があります。なので同じダブル・インディアンフルートでも、枝切りハサミのようにAの形になっているタイプでは演奏できません。
『聖母マリアの七つの喜び』の曲自体は、短くて覚えやすい易しい曲です。ふつうのインディアンフルートで吹いてもいい感じですよ。
製作途中に(なんだかヴァンゲリスみたい……)と意識した瞬間、変なスイッチが入ってしまって「ヴァンゲリスならこんな音を使うよね」「ここはこんな感じにするよね」とますますヴァンゲリスっぽくなってしまいました。
おかげで曲のインパクトを表現する新しい方法を学びました。
今までは楽器の音を大きくすることで表現していましたが、今回は楽器の数そのものを増やして表現しています。今まではドラムやピアノの音をばあんと強く鳴らしていましたが。今回は「じゃーん」「どどぉおん」と別の大きな音を追加することで表現しています。
ユニゾンも、実は今回やったのが初めてです。
思いかえしてみれば、過去に一度もユニゾンをやったことがなかったのでした。
このへんの知識は、たくさんの楽器を使ってシンフォニックな表現をするのに重要な気がします。次回作でも引きつづき研究してみます。
この文章は伴奏が出来上がった段階で、ファミレスで食後のコーヒーを飲みながら書きとめたものです。今までは作品に関する説明などは、演奏動画をネットに投函した後になって考えていました。しかしそれだと気持ちはもう済んでしまった事になっているので、どうにも頭が回りませんでした。このように、製作工程の途中途中で気づいたことを書きとめておけばよかったのです。
イーグル・ボーン・ホイッスルは北米インディアンに伝わる鷲の骨で出来た笛です。イーグル・ボーン・ホイッスルでジブリ映画『ゲド戦記』の曲『テルーの歌』を吹いてみました。
運指も載せています。動画を一時停止しながら確認してください。
» カラオケ音源を用意しました、使ってください。
イーグル・ボーン・ホイッスルはコンサートピッチではありません。私の持っている笛はC#少し高めピッチですが、他の笛はまた違っているでしょう。伴奏はMIDI打ち込みで鳴らしていますから、どんなピッチでも問題なしですが。現実のピアノで伴奏するのはつらいと思います。微細なチューニングができる電子キーボードやギターで伴奏することをお勧めします。
笛の音は純度が高い(倍音が少ない)ので、録音すると聞こえにくくなります。スペクトラムアナライザを見ながら音量を調節すると、伴奏に埋もれて聞きとりづらくなります。よく聞こえるように調節すると、今度は聞いているうち耳が痛くなってきます。イーグル・ボーン・ホイッスルのように甲高い音の笛は、いっそう音量バランスを取りにくいです。音楽作品で笛の音をきれいに聞かせることは、私の初期の頃からの課題です。ピースの足りないパズルを完成させるような努力を延々と続けています。いろいろ分かったら別の記事で説明します。
正直、人間の声の高さに近い楽器が音量バランスを取りやすいです……
間奏とエンディングに風の音が入ります。他にも尺八のような音や鐘の音などいろいろ重ねて、映画のワンシーンのような印象を表現してみました。
技術的には至極簡単でした。Forest KingdomというVSTiと使えば誰でもできます。ファンタジー系音楽を作るためのスタータキットみたいなVSTiでして、最初からこのような出来合のプリセットがたくさん用意されています。それを一つ一つ順に当てはめて鳴らしてみて、いちばんふさわしい音(風の音系)を選んだだけです。
小型のB管は無理なく指穴を押さえることができるのでらくちんです。アナサジフルート独特の低音は望めませんが、高音のぱーんと抜ける感じがあってこれはこれでいいかなと。
アーストーン・フルート工房のアナサジフルートは、コヨーテオールドマンさんとならぶアナサジフルート奏者の一人スコットオーガストさんがプロデュースしたものです。
この工房のアナサジフルートの吹口は尺八そっくりです。音を出しやすく反応が早い、音も大きいです。演奏のしやすさでは三つの工房★の中でダントツだと評価しました。音色まで尺八っぽいのが…吉と出るか凶と出るか。
★ 三つの工房
北米のコヨーテオールドマン・フルート工房、アーストーン・フルート工房、ウェイキングスピリット・フルート工房、の三つの工房がアナサジフルートを製作している。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。インディアンフルートでエンヤの『At Moment Lost』を演奏しました。
運指は動画を一時停止しながら確認してください。
インディアンフルートやリコーダ、オカリナなどの笛は、吹いているうちに息に含まれる水分が結露して、吹口に詰まります。音色が汚くなったり、最悪、鳴らなくなったりします。寒い冬は顕著で、一曲ぜんぶ吹きつづけていられないほどです。吹口が詰まるたびにブシッと強く吹いて、頻繁に水滴を吹きとばすことになります。
以前からオカリナ演奏家の間で知られているトリビアがありまして、吹口の中に眼鏡の曇りどめを吹きつけると、水滴が溜まらなくなり長く快適に演奏できるようになるそうな。口でくわえるところに曇りどめをスプレーして健康に問題ないのか、という議論はありますが。インディアンフルートの場合、水滴が詰まるのはバードと本体が接している箇所ですから、まったく関係ありません。
今回は演奏の直前に、バードと本体の隙間に曇りどめをスプレーして録音に臨みました。効果は抜群、一度も演奏を中断することなく順調に録音を終えることができました。
今回演奏したのはドレミ音階のインディアンフルートです。指穴が7つあります。ふつうのインディアンフルートでこの曲を演奏できるかどうかは不明です。音域は足りているようですが……運指が地獄かも。
もともとインディアンフルートは癖のない優しい音色です。西洋のドレミ音階にしてしまうともう、ほんとうにただの笛です。運指も英国のホイッスルと同じになりますしね。なので私は、ついついこれをホイッスルかなにかのように演奏してしまいがちです。
インディアンフルートを吹くからには「なるほどインディアンフルートだ」という演奏をしたいものです。エンヤの無国籍ミュージックを演奏していても、それでもなおインディアンフルートらしさを感じられるような演奏をしたいです。カルロス・ナカイやメアリ・ヤングブラッドなど、西洋クラシックを修めたインディアンフルート演奏家たちを改めて尊敬したのでした。
演奏している環境にもよるのでしょうが。うちで録音した笛の音は、そのままではとても聞けた物ではありません。もわもわしてよく聞きとれないくせに、特定の音を吹いたときだけキーンという倍音が耳に刺さったりします。
耳に障る特定の周波数の音を小さくするには、ふつうはイコライザを使用しますが。今回ようなケースの場合、イコライザで倍音を小さくすると、笛の音はほんとうにもわんもわんになってしまいます。倍音は笛の音を鮮やかに聞かせるために必要です。倍音は聞こえなければなりません、ふだんは聞こえていて構いません。ただ、ときどき耳が痛くなるほど不用意に大きくなるのが問題なのです。
このような「特定の周波数の音が”ときどき”耳に障る」という症状には、マルチバンドコンプレッサが有効です。
私は今回、笛の倍音をコントロールするつもりで本気でマルチバンドコンプレッサを使ってみました。結果は満足しています。鮮明でそれでいて耳に優しい音色になりました。マルチバンドコンプレッサは、今後もオカリナなど他の笛でも試してみます。まあ……なんだ、いつも「今回の音は今までとは違う!」って言ってる気がしますけどね。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。
インディアンフルートでエンヤの曲『Watermark』を演奏しました。
運指は動画を一旦停止しながら確認してください。
この作品はドレミフルートで吹きました。
北米インディアンフルートの本来の音階は五音階なので、ふつうの曲を演奏しようとすると、かえって他の笛よりも苦労することになります。
ドレミフルートは、インディアンフルートでもふつうの曲を演奏できるようにと、音階をドレミファソラシドに改造したフルートです。ドレミファソラシドになったインディアンフルートは、もはや単なる縦笛です。英国のホイッスルと大差ありません。あまりに珍し過ぎる楽器は、360度回ってむしろありきたりになってしまうものらしいです。
っても、大ざっぱに息を吹き込んでもきれいな音色で鳴るという、インディアンフルートの特性は健在です。リコーダやオカリナなどコントロールの神経質な笛の演奏者からすると「え、こんなでこの音が出るの!?」と拍子抜けするほど簡単にきれいな音が出ます。今後は「何でもいいから笛を学びたい」という人には、ドレミフルートをお勧めします。音域が狭いのがちょっと不満ですけど。
途中で聞こえる女性の歌は『Voice Of Passion』というソフトウェアシンセサイザの音です。
人の声を演奏するソフトウェアシンセサイザは、『初音ミク』などボーカロイドが有名ですが、これは巷のギター音源やドラム音源などと同じ、サンプリング方式の音源です。「エレーーーエスッ」「トゥリアーーリィアーー」などと歌手が歌ったフレーズを丸ごとサンプリングしてそのまま再生します。
一つの音だけ聞くとさすがにリアルですが、音と音の繋がりが悪いので、速い曲を演奏するとボロが出ます。また自由に歌詞を付けて歌わせることもできませんから、初音ミクのように前面に立ててヴォーカルを担当させることもできません。ちょうど今回の作品のように(なんか後ろで知らない歌を歌ってる……)という雰囲気を作るのに使えます。
前作から続いてユニゾンの練習をしています。
今まで60本以上の音楽作品を製作しましたが……そういえば今までユニゾンを使ったことがありませんでした。
「ユニゾンとは一つのメロディを複数の異なる楽器で一緒に演奏すること」というのは、もちろん知ってますよ。子供の頃に学校で習いましたから。しかしこんな「リンゴは赤いです」みたいな知識は、音楽のテストでは○をもらえても、現場ではなんの役に立ちません。「そもそもユニゾンとはこういうものだ」という自分なりの得心、「こんなときにユニゾンを使うのだ」という逆引き的な知識が必要です。
今回は、ビオラ・ダ・ガンバが担当している低音パートを強化するために、コントラバスでユニゾンしました。また、ピアノの音の広がりと奥行きを強化するために、ハープシコードでユニゾンしました。ピアノのメロディーラインと低音域を強化するためにシンセブラスでユニゾンしました。
「音の性質を強化するためにユニゾンを使う」というのが、今の私の一つの理解です。
広くは「複数の楽器の音を合成することによる新しい音の創造」だと理解しています。私は子供の頃ずいぶんシンセサイザに熱をあげました。口琴など倍音楽器にも入れ込みました。いかにも私らしい解釈だと思ってます。
ユニゾンは、たくさんの楽器を使った豪華絢爛な音楽作品を製作するために必要な知識だと思ってます。きちんと言葉にできるようになったら説明します。
TVゲーム『CHRONO CROSS』のオープニング『時の傷痕』を演奏しました。
『時の傷痕』はゲーム・ミュージックの中でも歴代名曲の一つに数えられています。
友人からリクエストを受けていたのですが、完成するのにほとんど2年かかりました。なんというか、いくら聴いても原曲以外のアレンジが想像できなかったのです。トルコの太鼓ダラブッカがなかなか効果的に用いられていたりして、そういうのにも引きずられて迷い続けました。
今回「いける!」と判断して、ついに完成させた次第です。
2年前よりも私のパソコン音楽の知識とスキルは高くなりましたし、新しい楽器も手に入れましたし、強力なソフトウェアシンセサイザやエフェクタも集めました。そんな今だから、完成させることができたのだと考えています。
演奏したインディアンフルートはふつうではありません。
ドレミフルートという、西洋音階ドレミファソラシドのインディアンフルートです。こうなってしまうともう、単なる木製のホイッスルなのですが。ふつうに曲を演奏できる★1 ので、このような宣伝動画を製作するのに重宝します。あるいはプロのインディアンフルート奏者も、ドレミフルートは重宝するでしょう。いくら即興演奏が真骨頂のインディアンフルートとはいえ、お客さんの期待を無視して延々と即興演奏ばかりするわけにもいきますまい。みんなが知っている映画音楽などをメドレーすれば、少しはお客さんの反応も違うはずです。
演奏したバグパイプもふつうではありません。
エレクトリック・バグパイプ、電子バグパイプという、バグパイプの形をしたシンセサイザです。スイッチオンですぐにコンサートピッチで演奏できるので重宝します。今回はMIDIケーブルでパソコンに繋いで、ソフトウェアシンセサイザを鳴らしました。3mの長さのケーブルしかなかったので、机のそばに張り付いて演奏するはめになりました。ちょっと5mケーブルを買わんといかん。
伴奏が出来上がって楽器演奏を練習する段になって、インディアンフルートの音域が足りないことに気がつきました。曲の後半に鳴らせない低い音が出てきます。それは例えばビルの設計図面を引いた後で敷地面積が足りないことに気づいたような、根本的ミスです。
仕方ないので、後半はバグパイプをメインを演奏するように変更しました。元々はこの作品はインディアンフルートをメインに考えていて、バグパイプは後半にちょっと出てくるだけ、みないな扱いだったのですが。半々て感じになりました。どうでしょうか。作品としてはかえって面白くなったかもしれません。
マスタバスに差すイコライザは、音楽作品の内容に関係なく、全体的な雰囲気を大きく決定します。一般的な話として生楽器演奏の録音にしろシンセの音にしろ、そのままの音だと、もわっとした生ぬるい、いかにも素人っぽい音です。マスタバスにイコライザを差して、多少なりとも低音域を下げ高音域を上げてやるのがふつうです。
私は今回はマルチバンドコンプレッサを使いました。
マルチバンドコンプレッサは、まずは単なるイコライザとして使います。慎重に低音域を下げ高音域を上げて、それで一発でいい感じになればラッキー。もうなにもする必要はありません。
そうではなくて全体としてはOKなのだが、曲の一カ所だけ高音がキンキンする、低音がモコモコするというときに、コンプレス機能を使います。スレッショルドを下げていって、高音がキンキンしたり低音がモコモコするのを抑えます。
今回は、後半の激しいパートで低音が聞くに堪えないほどモコモコしたので、大きくスレッショルドを下げて低音を抑えました★2 。一般に強くコンプレスするほどモコモコするという話ですから、今回やった調整は今後も定番として使えそうです。
★1 ふつうに曲を演奏できる
素人が息を吹き込んでも素晴らしい音色で鳴ってくれる、適当に指を動かしても曲っぽく聞こえてくれるという、まるで魔法みたいなインディアンフルートですが。唯一最大の短所?として、ふつうの曲が吹けません。(吹ける曲でも、ふつうの笛よりも苦労するのが常です。)
最近、街の楽器店でもインディアンフルートを店頭販売するようになりましたが。ご多分に漏れず、おいしい話ばかりをお客さんに売り込んでいるようで。「こういう用途には不向きですよ」ということも、隠さずきちんと説明するべきだと思うのですが。あるいは良いも悪いも分からずに、ただ珍しい新商品として売ってるのかもですが……
★2 スレッショルドを下げて低音を抑えた
ここで誤ってイコライザのゲインを操作して低音を小さくすると、今度は曲の前半が低音の足りないギスギスした音になりますよ。前半については完璧に聞こえるようにイコライザを調整していたのですから、そこから少しでもイコライザを弄れば、音がおかしくなるのは当然です。
マルチバンドコンプレッサのコンプレス機能はこのような、あっちを立てたらこっちが立たない、全体としてOKだが一カ所だけおかしい、という状況で使います。
北米インディアンの笛とエレクトリック・バグパイプでFINAL FANTASY 6の『仲間を求めて』を演奏しました。
この曲は全体を通して主メロディの音域が広いです。
なので最初は、私が持っているいちばん音域の広い楽器であるトリプルオカリナで演奏しました。
が、トリプルオカリナを録音したまではよかったのですが……耳が痛くて聞いていられません。
オカリナという笛はもともと倍音の少ないぼんやりした音です。なので単純に音を大きくしてもあまりよく聞こえません。かといってイコライザで倍音を強調すると、今度はメロディの高音域を演奏するときに耳がキンキンして痛いのです。マルチバンドコンプレッサなどいろいろ試してみましたが、ついに断念しました。私の今の力量ではトリプルオカリナをきれいに聞かせることができません……
代案として、インディアンフルートとレッドパイプで演奏して仕上げました。
この組み合わせは使いやすくて、最近はこればっかりです。まあ、どちらも商品として力を入れて売りこまなければならない楽器ですから、ちょうどいいところではあります。
プロのような音――市販のCDのような音を作る、というのが私が音楽作品を製作しはじめた当初からの課題です。
マスタリングに使うイコライザ――mp3ファイルを作成する直前にかけるイコライザとして、最近は私はGlissEQを使っています。
GlissEQは基本はパラメトリックイコライザですが、それぞれの曲線ピークが、周りの状況に合わせて動的に上下するという機能を持っています。
例えば曲の高音域を強調していたとして、パーンとシンバルが鳴ると、瞬間に高音域の音量を抑えて他の音域とバランスを取ろうとします。
同様の機能を持つエフェクタとしてマルチバンドコンプレッサがありますが、マルチバンドコンプレッサが限定された範囲内で音量の異常を補正するのに対して、GlissEQは全体のバランスをみながら補正します。それぞれに長所短所があります。マルチバンドコンプレッサは効き目が大きいですが、やり過ぎて結果が歪になることがあります。GlissEQはバランス良いのですが、今一つ効きが悪い、というケースがあります。
一時期は「使い物にならない!」と投げだしたGlissEQですが、だいぶ使い方のコツが分かってきました。結局、いつもこれでOK!みたいな万能な設定はないのですね。曲毎に耳で確認しながら調整するしかないのだと納得しました。
» GlissEQの通販ページはこちら
北米インディアンフルートと電子バグパイプでエンヤの『チャイナ・ローゼス』を演奏しました。笛の運指については動画を一時停止しながらご確認ください。
演奏したインディアンフルートはドレミフルートという、西洋音階に調律した特殊なフルートです。指穴が7つあります。China Rosesは易しい曲なのでふつうのインディアンフルート★1 でも演奏できると思いますが。西洋の曲を演奏するなら、当然のことながら、西洋のドレミ音階に調律している笛で演奏するのが楽ちんです。
それとこの曲は後半に半音だけ高い音に移調します。
なので後半はキーが半音高い笛に取り替えて吹きました。西洋のクラシック音楽では同じ笛でがんばって半音を吹くのが流儀ですが、民族音楽ではこのように、曲の調に合わせて笛を取り替えることをよくやります。運指はいつも同じなので楽ちんです。
» ドレミ音階のインディアンフルートについて
演奏したバグパイプはレッドパイプという、ドイツ製のエレクトリック・バグパイプです。
バグパイプの形をしたシンセサイザです。これはいちばんシンプルな形の初期モデルです。黒とオレンジのいかにも作り物っぽい革バッグに、メロディを演奏するチャンター管が付いているだけという。しかしそれがいい。元々はプライベートで練習するように購入したのですが、意外に見栄え良さそうなので、試しに使ってみました。
» レッドパイプについて
このところずっとユニゾンを使いこなす練習をしています。
たくさんの音を使う豪華絢爛なポップス作品を製作するには、ユニゾンを使いこなすことが重要だと考えています。ユニゾンして楽器のメロディラインをまとめ減らさないと、ごちゃごちゃと何をやっているか分からない状況に陥るでしょう。
ユニゾンとは「音の性質の強化」だと、私は理解しています。
例えばたくさんの伴奏楽器が鳴っている中で、笛だけが主メロディを演奏すると聞こえにくいので、ピアノやチェロ★2 でユニゾンしてして主メロディを強化しました。
またチェロが少し弱かったので、要所要素でコントラバスでユニゾンして低音を強化しました。
また伴奏しているピアノのアルペジオをはっきり聞かせるために、ハープシコードでユニゾンしてピアノのメロディラインを強化しました。
ユニゾンした音は……聞き分けられないようにこっそり鳴らして下支えするやり方もありますが、豪華絢爛にするならむしろはっきり聞こえてほしいところです。なので、ユニゾンの音は1/16拍~1/8拍ほどテンポディレイで遅らせて鳴らしました。
マスタバスに差すイコライザとしていつものGlissEQと、今回は新しくCurveEQを併用しました。
CurveEQはイコライザなんですが、ある曲の周波数特性を他の曲にコピーするという特殊機能を持っています。平たく言うと自分の音楽作品の雰囲気を、他の曲の雰囲気にそっくりにすることができます。
今回は本物のエンヤのChina Rosesの雰囲気をコピーして私の作品にペーストしました。どうでしょう、エンヤっぽく聞こえますか?
CurveEQの、曲の雰囲気をコピー&ペーストするという機能はアイデアとしては秀逸ですが、実際には内容の伴わない不完全な機能です。使える・使えないでいえば、使えないエフェクタです。でも私はこれをお金を払って買いました。限定的にでも使える状況はないかと、けち臭く模索しているところです。GlissEQだって、最初は使えないアイデア倒れのエフェクタだと判定してしばらく捨ててましたからね。案外CurveEQだって使えるかもです。
» CurveEQについて
★ ふつうのインディアンフルート
初心者がいきなり吹いても美しい音で鳴ってくれる。適当に指を動かしても曲っぽく聞こえてくれる。インディアンフルートはまるで魔法みたいな笛ですが。
最大の短所として、ふつうの曲が吹けません。音階はドレミファソラシドが全部揃っていませんし、音域は1オクターブしかありませんし。確かにアメイジング・グレイスやもののけ姫など、インディアンフルートで吹ける有名な曲がいくつかあります。また換え指や半穴開けしてがんばれば、なんとかドレミファソラシドを鳴らすこともできます。しかしそれで「ふつうの曲も吹けます!」と宣伝するのはどうでしょうか……やればできるというのと実用的であるのは別だと思いますね。実用的でないところは実用的でないと、はっきりお客さんに伝えた上で買ってもらうべきだと思いますね。
★ チェロ
厳密にはチェロの音ではなくて、ビオラ・ダ・ガンバという中世の古楽器です。外観はチェロそっくりですが、ギターのようにネックにフレットが付いています。チェロが熟女のような艶めかしい音色であるのに対して、ビオラ・ダ・ガンバは老婆のようにしわがれた音色です。私はチェロの音源を持っていないので仕方なく使っていましたが、最近はビオラ・ダ・ガンバの音が好きになりました。
北米インディアンの笛と電子バグパイプで映画『スカイ・クロラ』のメイン・テーマを演奏しました。笛の運指については動画の最後の方に載せています。一時停止してご確認ください。
『スカイ・クロラ』は押井守のアニメーション映画です。
平和な時代に人々が求めたショーとしての戦争。どこかで誰かが戦い、死んでいくことを、安全な場所から観戦することでしか、平和を実感出来ない。それは絶対に終わらせてはいけない、そして嘘であってはいけないゲーム。”キルドレ”たちが命を懸けなければ、そのショーは成立しない……
音楽は押井さんといつもコンビを組む川井憲次。彼はこの『スカイ・クロラ』で第41回シッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀映画音楽賞を受賞しました。
私は押井さんの映画をよく観ますが、それは音楽を担当しているのが川井さんだから、というのがとても大きな理由だったりします。そのくらい川井さんの作風は好きで、今回、初めて彼の作品をカヴァーできて満足しています。
この曲は14拍子です。
ぱっと聞いただけでは気づかないほど自然なメロディではありますが、曲に合わせて拍子をとっていると途中で(あれ?)って感じになります。この妙な尺の合わなさが、この曲独特の浮遊感を醸すのに一役かっていると憶測しています。
KAWAIのスコアメーカーという楽譜作成ソフトがありまして。
楽譜のデジタルスキャン画像やpdfファイルを解析して、midiファイルを生成することができます。
今回の作品はスコアメーカーを入手したからこそ、完成したようなものです。
ダウンロード販売していた楽譜(pdfファイル)を購入してスコアメーカーに読みこませ、midiファイルを生成しました。後はいつものとおり、Band-in-a-Boxを使ってmidiファイルからコード進行を逆算し、自動伴奏させました。アレンジとミックスダウンはSONAR X2を使いました。
スコアメーカーは今後も活躍してくれるでしょう。
いっそう製作期間を短縮して、たくさんの演奏動画をウェブにアップする所存です。
» スコアメーカーのメーカーサイト
木製の縦笛はインディアンフルートです。
北米インディアンに伝わる笛です。これでなかなかのハイテクです。他の笛にはないブレス・アブソーバを搭載していて、息の乱れを均してくれます。初心者が吹いてもそこそこきれいな音色で鳴ってくれるという優れものです。
インディアンフルートの本来の音階は、即興演奏しやすいように五音階になっていますが。今回演奏したのは西洋のドレミ音階に改造したインディアンフルートです。指穴が7つあります。
» ドレミ音階のインディアンフルートのカタログページ
ドラゴンの頭がついたヘンなのはバグパイプです。
バグパイプは革バッグにリード笛を取りつけた楽器です。息を吹きこんでバッグを膨らませて、バッグを締めつけて笛を鳴らします。これは本物ではなくて、バグパイプの形をしたシンセサイザ。今回はMIDIケーブルでパソコンに繋いで鳴らしました。
» 電子バグパイプのカタログページ
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。
『スカボロー・フェア』を演奏しました。運指は動画の最後に載せてます。
「スカボローの市場に行くならよろしくと伝えてくれないか。昔あいつは俺の女だったんだ。」から始まる、世界的に有名な英国の民謡です。歌はその後、およそ現実味のない実現不可能な課題ばかり次々に並べ上げて「それが出来たならあいつは俺の元に戻ってきてくれるだろうか……」と嘆きます。(つまり元カノと縒りを戻すことは絶望的だという話。)
この歌が世界中に知れ渡ったのは、私はサイモン&ガーファンクルの功績だと思っていますが、その認識で合っているのでしょうか。彼らがスカボロー・フェアを演奏して以来、歌い出しのコードは7Sus以外考えられなくなりました。そのくらい印象的な演奏でした。
1コーラスは短かくて楽譜にすると小さな曲です。
しかし実際に歌ったり演奏したりするときは、歌詞に従ってコーラス毎にメロディを微妙に変化させるのが通例です。いろんな人の演奏を聴いて確認するといいでしょう。
演奏した楽器はインディアンフルートです。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。音域が1オクターブしかなく、ペンタトニックという特殊な音階にチューニングされているため、ふつうの曲をふつうに吹くことが難しいです。
スカボロー・フェアはがんばれば演奏できますけど、西洋のドレミ音階にチューニングした改造フルートを使えば楽ちんに演奏できます。これは北米のタヴェワ・ヤツェツィ工房が製作したドレミ音階のインディアンフルートです。指穴が7つあります。
» ドレミ音階のインディアンフルートについて
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。
ジブリ映画『となりのトトロ』の曲『風のとおり道』を吹いてみました。
運指は動画の中に載せています。一旦停止しながら確認してください。
こうして他人の演奏を聴くかぎり、なんともインディアンフルートにぴったりの曲ですが。総じてジブリの曲――久石譲さんの曲は臨時記号や転調を多用するため、音域が狭くて西洋音階でないインディアンフルートで演奏するのは難しいです。
今回は西洋音階に調律した特殊なインディアンフルートで吹きましたが。
それでも臨時記号の表現にシビアな運指を要求されした。よっぽど練習する覚悟のある人でないと勧められない曲です。
曲中でフルートの音が2声の合奏になっている箇所は、PitchWheelというエフェクタで低音パートを生成しています。
私の場合、音楽作品を製作する上でいちばんたいへんなのは、私自身の楽器演奏です。練習して演奏するのにたいへんな時間がかかりますから、メインパートと低音パートの2回も録音するなんて、やってられません。なので簡単に低音パートを生成できるPitchWheelをたいへん重宝しています。PitchWheelの音はがさがさした汚い音ですが、伴奏とメインの笛の音でカバーして、なんとかごまかせています。
この手のエフェクタ――ピッチシフタはとても便利です。
PitchWheel自体は使い勝手に難がある★ ので勧めませんが、他のいい感じの製品を探すとよいです。
» とりあえずPitchWheelのメーカーサイト
★ 使い勝手に難がある
PitchWheelは横からMIDIの音符データを入力してコントロールします。PitchWheelに入力するMIDIの音符データは、C4を原点とする音程差の差分です。例えばC4より3半音低いA3の音を入れると、PitchWheelはオリジナルの音より常に短三度低い音(ドと低いラの関係の音)を鳴らします。
もちろん四六時中ドとラの関係で鳴されてはめちゃくちゃになりますから、コード進行に応じて「ここは長三度で、次は四度…」というふうに適切なMIDIデータを入力する必要があります。このようなMIDIデータを用意するのが、たいへんなのです。
私はというと、Band-in-a-Boxと自作のJavascriptプログラムで一瞬にMIDIデータを製作できますから「PitchWheelって便利だねっ」ということになっていますが。他の人はかなり苦労すると憶測します。何らかの工夫をするか、別のピッチシフタを探した方がいいと思います。
ピッチシフタというエフェクタ自体は、とても便利ですよ。
インディアンフルートでファイナルファンタジー6の『ティナのテーマ』を演奏しました。
インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。
少々がさつに息を吹きこんでも良い音で鳴ってくれる、適当に指を動かしてもなんだか曲っぽく聞こえてくれるという、即興演奏向きの易しい笛です。反面、音域が1オクターブしかなかったりドレミファソラシドがぜんぶ揃っていなかったりで、ふつうに曲を吹くことが難しい。
インディアンフルートでふつうに曲を吹けるようにと改造したのがダイアトニック・フルート(ドレミフルート)です。
動画で私が演奏しているのは北米アーストーン工房のダイアトニック・フルートです。音階を西洋のドレミ音階に調律して、音域もほぼ2オクターブまで広げています。『ティナのテーマ』は音域が広いので、ふつうのインディアンフルートでは演奏できませんし、ダイアトニック・フルートでもかなりスペックの高い物でないと演奏できないでしょう。
今回の曲ではゲームミュージックっぽいデジタルな音色を用いながらも、全体的にアコースティックな雰囲気にまとめるために、IR(インパルス・レスポンス)を多用しています。例えば中央でタララン!と鳴っているスネアドラムの音は、少し遠くに聞こえるというか、実際に叩いたスネアドラムを録音した風に聞こえます。スネアドラムはドラムシンセの音なので、もちろん叩いたりマイクで録音するようなことはしていないのですが。
IRはリバーブの一種です。
一言でリバーブといってもいろんな方式があって、IRは、本物のホールやスタジオで記録した残響データ★ を使います。なのでほんとうにそのホールで演奏して録音したかのような臨場感を得ることができます。有名なホールやスタジオの残響データは高額で売買されていますが、お試し版やフリーの残響データもけっこういい雰囲気を出してくれます。
シンセの音はどうしても綺麗すぎるので、IRに通して生楽器のような雰囲気に加工することをよくします。軽音の部室でマイクを立てて録音したような粗悪?な音質がお気に入りです。
★ 本物のホールやスタジオで記録した残響データ
ホールやスタジオで競技用のピストルを鳴らして、パーンという残響音を録音して使います。だから残響データといのは只のWAVデータで、プレイヤーで再生するとパーンという音が聞こえます。
ピストルの音は実は、人の耳で聞きとれないほど非常に短い音です。ピストルのパーンという音は実は、ピストルの音ではなくて、残響音がほとんどです。
IR方式のリバーブはこの残響データを解析して「ピストルの音がこんな風に残響するなら、楽器の音はこんな風に残響するはず」と計算し、楽器の音に残響音を追加します。
尚、今はピストルの音は使わなくて、電子的なパルス音を使うそうです。