アナサジフルートの吹き方、概説1
北米先住民族の遺産。1400年前の古代の音色が現代によみがえる。
アナサジフルートは北米アリゾナ州の洞窟遺跡から発掘された1400年前の古い笛です。長尺を活かした豊かな低音と、オーバートーンによる華やかな高音が魅力です。
» アナサジフルートを吹いてみた
これからアナサジフルートの吹き方について説明していくわけですが、まず概説からはじめましょう。雑学として友だちに吹聴してください。
以下はアナサジフルートの研究家であるスコット・オーガスト氏のウェブサイトを翻訳しました。
» アナサジフルート概説のオリジナルページ
概説
ふつうのインディアンフルートとまったく別の笛です。
古代プエブロインディアン=アナサジの笛。マイケル・グラハム・アレン(別名コヨーテ・オールドマン)がこれを復元しました。彼は、歴史家と著者であり熱心なコレクタでもあるリチャード博士から提供された発掘品を寸法測定してこれを復元したのでした。
アナサジフルートは他のふつうのインディアンフルートのように西洋文化の影響を受けていません。その意味でアナサジフルートは本当の"ネイティブ・アメリカンの笛"なわけですが、以下で説明するように、世界中の笛と同じような特徴を共有しています。
アナサジフルートと近代インディアンフルートとの大きな違いは、音の出し方にあります。
近代インディアンフルートがリコーダのような構造をしているのに対して、アナサジフルートは管の縁を吹いて鳴らす笛です。管の縁を吹いて鳴らすやりかたは、世界のいくつかの古い笛に見ることができます。最も古いものの1つは中東のネイで、起源はピラミッドの時代までさかのぼります。ネイとカヴァルは現在のトルコで見かけます。管の縁を吹く笛で一番有名なのは日本の尺八です。南米西部にはケーナと呼ばれる笛があります。北米のホピ族ではいまだに祭事でこのタイプの笛を演奏します、南カリフォルニアでもインディアンたちがニワトコでつくった笛を吹きますが、もうあまり見かけません。
演奏技術
近代インディアンフルートとちがって、演奏者は音を出すために管の縁に唇を当てるやり方を学ばなければなりません。最初に音が出るまでに、初心者なら1時間~1週間かかるかもしれません。私(スコット・オーガスト本人)は幸運にも1時間で鳴らせましたが、4ヶ月経っても音を出すのに苦労することがありました。
アナサジフルートは単なる空洞の木管です。管の縁の薄い部分が歌口です。演奏者は下唇と顎で管の開口を塞いで、歌口の向こうへ息を吹きます。息を歌口に正しく当てないと音が出なかったり、キーキー鳴ったりします。
音階
アナサジフルートの全長は76cmで、一番下の穴は、頭から64cmのところに開いています。材質は杉。全部の指穴を押さえたときの音がG#で、驚くほど近代インディアンフルートに近い五音階です。ただし近代インディアンフルートがマイナー(ラの音からはじまる)なのに対して、アナサジフルートはメジャー(ドの音からはじまる)です。ドからはじまる五音階はドレミソラ、アナサジフルートはこれにミbが追加されています。
ピッチはG#,A#,B,C,D#,F,オクターブ上の音…です。
強く吹いて鳴らせるオクターブ上の音はG#,A#,B,C,D#,2オクターブ上のG#。
指穴を一つとばしにふさぐことによってG,F#,Eのような半音を出すこともできます
アナサジフルートの指穴の位置は近代インディアンフルートと違っていて、写真を見てのとおり上下の三つの指穴の間に大きなひらきがあります。
…長いので次回に続きますね。