例題
インディアンフルートの運指、装飾音、音の区切り方など、一つひとつの話についてあらかた説明しました。あとはそれらを組みあわせてどんなふうに吹けばいいのかという話です。これには短いフレーズを一つ例にあげて説明すればいいでしょう。
次のようなフレーズを例題として解説していきます。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
インディアンフルートの運指、装飾音、音の区切り方など、一つひとつの話についてあらかた説明しました。あとはそれらを組みあわせてどんなふうに吹けばいいのかという話です。これには短いフレーズを一つ例にあげて説明すればいいでしょう。
次のようなフレーズを例題として解説していきます。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
最初に全体的な注意として。
一つ一つの音をみんな、そっと静かに吹きはじめてください。
いきなりマックスでぷーっぷーっと吹くのではなくて、ラジカセのボリュームをすばやく回すように小から大へすっと大きくします。これは音と音の間を区切って吹くときは必ずそうすると考えてください。冒頭の「ラドレミー」はラ・ド・レ・ミーのぜんぶの音についてぞれぞれ、すっ・すっ・すっ・すぅーっと吹きはじめています。
» 冒頭の「ラドレミー」
このように吹くとインディアンフルートの音がやわらかく聞こえます。 » 関連記事
一音一音ぜんぶをすっすっすーっと吹くなんてそんな忙しい、と思われるでしょうが。これは唇でやってます。音と音の間を区切るときは息を切るのでなくて、息は吐いたまま唇でふぉっふぉっとやわらかく区切っています。
このとき唇を完全に閉じてしまうとぽっぽっぽーっという音になりますので、唇を完全に閉じてしまわないように手加減しながら、ふぉーっ、ふぉーっと吹きます。
と言いつつ私もよく失敗してぽーっと吹いていますけど。
この唇で音を区切るやりかたはインディアンフルートらしいおっとりした音色になりますが、速い曲が吹けません。速い曲はるるるっと舌先で音を区切ります。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題の頭の「ラドレミーミーミ レミミーー」のところはミーミーミ、ミミーーのように同じミの音が続いています。同じ音が続くときはふつうに音を区切ってもいいのですが、右手人差指の装飾音で区切るのもアリです。例題ではぜんぶ装飾音で区切っています。
» ミの音の連続を装飾音で区切る
ぜんぶ装飾音で区切ってしまうとにょろっとした感じになってしまいますね。あるいは何カ所かはふつうに区切った方がよかったかもしれません。
右手人差指の装飾音は、インディアンフルートを鳴らしながら一瞬、右手人差指で指穴を叩きます。スローモーションで説明すると指が上がって指穴が開き、それから指が下がって指穴をふさぎます。
でも実際には指を上げている自覚はありません。TVゲームのボタンを押す感じに似ています。「指を上げてそれからボタンを押して…」なんてしないでしょう。押す、押す、押すっ。こんな感じです。 » 関連記事
それと秘訣なんですが、
人差指の動きに合わせて舌先でツツッ、ツツッと息をすばやく切ってやると、インディアンフルートらしい強烈な装飾音になります。 » 関連記事
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題の頭で何カ所か、長く音をのばすところがあります。「一音一音そっと静かに吹きはじめること」と説明しましたが。このように長くのばす音は特に、小さな音からだんだん大きくしながらビブラートをかけるといいです。このへんの要領は日本の演歌とそっくりです。あーあんな感じ、と分かるでしょう。 » 関連記事
音を長くのばしながらビブラートをかけると上手っぽく聞こえます。
この例題くらいゆっくりしたビブラートは、本当に息の強さを周期的に変えてます。コツなにも、本当にそのようにゆらゆらと音をゆらしながら吹いています。
もう少し速いビブラートは、インディアンフルートを吹きながらうふふふふっと笑うとできます。ふだんは意識して笑ったりしませんからお腹が気持ち悪いですが、そのうちフルオートでビブラートがかかるようになります。 » 関連記事
実はビブラートをかけずにまっすぐ音をのばす方がはるかに難しいです。だからビブラートはできるようになって損はしません。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題中盤の「ミソーミレー」は聴かせどころで、フレーズの中でいちばん高い音が出てきます。長くのばす音はビブラートをかけるものですが、このいちばん高いソーの音はわざとビブラートをかけずにまっすぐのばしています。…こうした方がカッコイイ気がしたので。
» いちばん高い音はわざとビブラートをかけなかった
インディアンフルート奏者の真砂秀朗さんがこんな、まっすぐな音を使います。紙飛行機を投げたようにどこまでもまっすぐのびる音はもう、ほれぼれします。
一般に、笛の音をまっすぐのばすのは非常に難しいです。しかしインディアンフルートはピッチが安定していますから他の笛よりはマシです。特に高い音は息を強めに吹きこむとふらつかなくなるので、狙ってみる価値はあります。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題中盤「ミーソーーミーレーー」のレーーの中で2回、装飾音が入っています。ここで説明しているのは前に入ってる装飾音の方。
インディアンフルートでは同じ音がいくつも続くときに右手人差指の装飾音で区切ったりする、と説明しましたが。一つの音を長くのばすときにも不規則に入れることがあります。「一つの音を長くのばしてもつまんないよなー飽きちゃうよなー、間が持たないよ。」という感じにぴょこっぴょこっと入れます。 » 関連記事
この”不規則に”というのが極めてアナログな感覚で、言葉で説明できません。強いて言えば”外す”ことを心がけます。「1,2,3,4,…」のようなきれいな拍子には絶対に乗りません。聴いている人が「えっ、ええっ?」と蹴躓くような場所に入れます。
例題の2つの装飾音のコンボは自分でもきれいにキマっていると思います。1発目の装飾音のおかげで2発目の跳ねあげがすごく中途半端に聞こえます。
» レーーで不規則に入る2つの装飾音
こういう、言葉で説明できないことがインディアンフルートの芯です。言葉で説明できない、楽譜にも書けない。これはインディアンフルートの曲をたくさん聴いてまるごと身にしみこませるしかありません。曲を聴きながらいっしょに頭の中で装飾音を入れてみます。最初は「えっ、ええっ?」と蹴躓いてばかりですが、そのうち来るのが分かるようになります。違和感がなくなって、最後には「ここで来なきゃウソだろうっ」という感覚になります。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題終盤の「ラードードー」のあたりから少しだけ、音量を下げておとなしく吹いています。聴いている人が「ああもう終わるのかな」と、そのつもりで聴いてくれるようにという配慮です。(録音がうまくいかなくて聞いて分かりにくくなりました、すみません。)
» 終わりっぽく聞こえるように少しおとなしめに吹いてみた
楽器の演奏を、演奏者と聴き手とのコミュニケーションと捉えるなら、楽譜どおりの音を出すだけではなくて「ここ、聴き所よっ」「もう終わるね、いいよね。」というメッセージまで聴き手に伝えるのが上等でしょう。聴き所なら音の強弱を大げさに強調して装飾音やこぶしで飾り立てる、しんみり終わる前には音量を下げて抑揚も乏しく演奏してみせる。ステージの派手なアクションも音には関係ありませんが、コミュニケーションという観点からは無視できません。
…っても演奏に余裕があれば、できればの話ですよ。
実際、初心者の演奏は音符を追うことに必死で聴き手へのメッセージがないので、だからいかにも初心者な演奏に見えます。私自身、覚えたての曲をよく練習もせず人前で吹くとメロディーだけ追いかけたベタっとした演奏になります。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
ドの音を長くのばして終わるときはミレドの装飾音を入れてみてはどうでしょうか。ミレドの装飾音は、ドーーと長くのばしている間に「ミレドッ」とすばやく吹きます。「ドーーミレドーー」のように指をすばやく、ぱらぱらっと動かす感じです。 » 関連記事
» ミレドの装飾音
例題では「ミレーレー、ドーー」のように吹いてますが、吹いている私の意識としては「ドーーーー」と一つの音をずっと引っぱっています。「もう終わりますっ」と聞き手にアピールするために過剰に装飾したため、装飾音というよりメロディーの一部のようになってしまっていました。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題終盤の「ドレレーードーラードードー ミレドーー」は息継ぎなく一息で吹いています。長いフレーズを一息で悠々と吹きこなすと、インディアンフルートにふさわしい、ゆったりおちついた感じに聞こえます。(達人っぽい雰囲気も期待できます。)
長いフレーズを一息で吹けるようになるために、毎日水泳などして肺活量を増やすのが本当ですが。
ここでは循環呼吸を使って音を途切れさせずに息継ぎをしています。例題をよく聞くと、最後の「ミレドーー」の直前にスンと鼻をすするような音が入っています。この瞬間に息を吸いこんでいます。循環呼吸の瞬間は、どうしても音がよろけたりしますので、音と音の継ぎ目でしかけたり、ビブラートや装飾音でごまかしたりするといいです。 » 関連記事
» ミレドの装飾音にまぎれて循環呼吸で息継ぎ
インディアンフルートは笛の中でも特に循環呼吸しやすい笛ですから、積極的に取りいれていけばいいと思います。
ただしあんまり長いフレーズを息継ぎなしで吹くと不自然になります。インディアンフルートではフレーズの間の息継ぎも大切な演奏要素です。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明しています。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
例題の最後は「ドーー(ピョッ)」と音を跳ねあげて締めくくっています。フレーズの最後や曲の最後でぴょっと音を跳ねあげるのは、いかにもインディアンフルートらしいやり方です。積極的に挑戦すべきです。 » 関連記事
» 最後をぴょっと跳ねあげて終わるとインディアンフルートっぽい
これは息をすうっと小さく消しながら、ぜんぶの指をぱっとひらきます。指につられて息をぷっと強く吹くととんでもないことになるで注意。息はそっと、指はすばやく元気よく。
インディアンフルートらしく吹くコツについて例題を追いかけながら説明してきました。
ラドレミーミーミ レミミーー
ミーソーーミーレーー
ドレレーードーラードードー ミレドーー
» インディアンフルートの例題を吹いてみた
拍子とは2拍子、3拍子、4拍子といったあの拍子のことです。インディアンもみんなで歌ったり踊ったり、インディアンフルートと太鼓で合奏したりするときには、2拍子なり4拍子なりでノリを合わせますが。フルート一本だけでソロ演奏するときは拍子なしで吹くことがよくあります。あるいはフレーズの場所場所によって3拍子だったり4拍子だったりコロコロ変わると言えばいいのでしょうか。
拍子とはそもそも、何人かでいっしょになって歌ったり演奏したりするときに足並みをそろえるために必要なものですから。たった一人でフルートを吹くときに拍子を守ることは必須ではありません。むしろ拍子からはなれて自由に吹いてみせることにより、いかにもインディアンフルートらしい悠々とした雰囲気になります。
例題は全体的に拍子を感じさせないように、わざと1拍増やしたり減らしたりしながら吹くことを心がけました。
のばす音を1拍よけいに長く吹くというのは、拍子をくずす簡単な方法だと思ってます。
いかにもインディアンフルートらしく吹くコツは「インディアンフルートのマネをすること」だと説明しました。なんというか「インディアンフルートというのはつまりこんな感じ」というのが頭の中にあって、そのとおりに演奏するということです。しかしそれには「つまりこんな感じ」というのが頭の中にできていないとダメです。
「つまりこんな感じ」というのはどうすればできるのか。これはもう聴くしかないです。CDでも生演奏でもたくさん聴くしかないです。これは聴いた総時間が大事で、たくさんのCDを集める必要はありません。1曲だけだったら1000回、10曲入りのCDなら100回、CDが10枚あるなら10回ずつ、みたいな感じです。(1曲を1000回聴くのは修行みたいなので、やっぱりCDは何枚かあった方が楽しいと思います。)
インディアンフルートの吹き方について、一つの例題を追いかけながら説明してきました。これで終わりです。
インディアンフルートは笛の中でおそらく最も簡単な笛です。マスターするのは本当にたいしたことない。「インディアンフルートのマネをすること」これが今、私が言えるベストのアドバイスです。いろいろ言い足りないことがあるような気がしますが…それはまたの機会に、どうもおつかれさま。