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2012年12月01日

ホピの笛 概要

» ホピの笛を吹いてみた

北米で最も古い部族に伝わる笛

ホピの笛は北米インディアンのホピ族に伝わっていた笛です。
見てのとおり巷のインディアンフルートとは全く違う、アナサジ遺跡から出土した古代フルートにそっくりの形状をしています。ホピ族は自らを北米インディアンの中でも最も古い部族だと称していて、このようなアナサジ文化のフルートを継承していることも、その根拠の一つかもしれません。

ホピの笛は、ただの木管に指穴を開けただけの原始的な笛です。尺八やケーナのように管の縁を吹いて鳴らします。音を出すのはかなり難しいです。

ホピの笛は1900年ごろまで、ホピ族のトウモロコシ祭のときに演奏されていたそうです。今でも現役で演奏されているという話を耳に挟んだのですが…YouTubeを探しても資料を見つけることができませんでした。むしろ『ホピの笛の演奏』と称してふつうのインディアンフルートを演奏している動画がいくつも投函されていましたから。もうホピ族も忘れてしまったのかもしれませんね。

吹き方は古代アナサジフルートと同じ

ホピの笛は古代アナサジフルートの直系の子孫です。長い年月の間に指穴が一つ退化して消えてしまいましたが、基本的な演奏方法は古代アナサジフルートとまったく同じです。ですからホピの笛の吹き方については、古代アナサジフルートの吹き方を参考にしてください。

ここでは音階と運指を説明するだけにとどめます

ホピの笛の運指

1月に頼んだホピの笛が昨日とどきました。海外との取引ではこういうことがあります。笛を持ってきた郵便配達人と「私も春に自動車の部品をヨーロッパから取りよせたんですが…とどいたのが5月末で」「それではせっかくのゴールデンウィークがパーですか」などと詮ないグチをこぼしあいました。

ホピ族の伝統的な笛です。ソプラノリコーダーのほぼ2倍の大きさ。変則的な指穴、尺八よりも簡単な吹口。廉価な無地バージョンを注文したのですが、コヨーテオールドマンが「待たせたおわびに」とはりきって特別バージョンをつくってくれました。新作アルバム"UNDER AN ANCIENT SKY"のジャケットを思わせる妙にスモーキーな虹色のペイント。コヨーテの親子が虹の上を跳ねている姿が彫りこまれています。

これは結局、どうしても欲しいというお客さんに譲ってしまいました。
んでドレミがわからないと困るでしょうから、運指表です。

2オクターブ目のシが出ないのは、元もとそういうものなのかそれともこの笛自体のクセなのかよくわかりません。鳴らし方は尺八やケーナと同様です、尺八に近いかな。ケーナほど立てて構えません、もう少し下向きというか寝せて構えます。

右はコヨーテオールドマンの演奏。吹いているのはアナサジフルートですが、唇の形はホピ族の笛もほぼ同様です。

2012年12月05日

エンヤ -At Moment Lost

インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。インディアンフルートでエンヤの『At Moment Lost』を演奏しました。
運指は動画を一時停止しながら確認してください。

インディアンフルートには眼鏡の曇りどめ

インディアンフルートやリコーダ、オカリナなどの笛は、吹いているうちに息に含まれる水分が結露して、吹口に詰まります。音色が汚くなったり、最悪、鳴らなくなったりします。寒い冬は顕著で、一曲ぜんぶ吹きつづけていられないほどです。吹口が詰まるたびにブシッと強く吹いて、頻繁に水滴を吹きとばすことになります。

以前からオカリナ演奏家の間で知られているトリビアがありまして、吹口の中に眼鏡の曇りどめを吹きつけると、水滴が溜まらなくなり長く快適に演奏できるようになるそうな。口でくわえるところに曇りどめをスプレーして健康に問題ないのか、という議論はありますが。インディアンフルートの場合、水滴が詰まるのはバードと本体が接している箇所ですから、まったく関係ありません。

今回は演奏の直前に、バードと本体の隙間に曇りどめをスプレーして録音に臨みました。効果は抜群、一度も演奏を中断することなく順調に録音を終えることができました。

ドレミ音階のインディアンフルート

今回演奏したのはドレミ音階のインディアンフルートです。指穴が7つあります。ふつうのインディアンフルートでこの曲を演奏できるかどうかは不明です。音域は足りているようですが……運指が地獄かも。

もともとインディアンフルートは癖のない優しい音色です。西洋のドレミ音階にしてしまうともう、ほんとうにただの笛です。運指も英国のホイッスルと同じになりますしね。なので私は、ついついこれをホイッスルかなにかのように演奏してしまいがちです。

インディアンフルートを吹くからには「なるほどインディアンフルートだ」という演奏をしたいものです。エンヤの無国籍ミュージックを演奏していても、それでもなおインディアンフルートらしさを感じられるような演奏をしたいです。カルロス・ナカイやメアリ・ヤングブラッドなど、西洋クラシックを修めたインディアンフルート演奏家たちを改めて尊敬したのでした。

マルチバンドコンプレッサってすごい

演奏している環境にもよるのでしょうが。うちで録音した笛の音は、そのままではとても聞けた物ではありません。もわもわしてよく聞きとれないくせに、特定の音を吹いたときだけキーンという倍音が耳に刺さったりします。

耳に障る特定の周波数の音を小さくするには、ふつうはイコライザを使用しますが。今回ようなケースの場合、イコライザで倍音を小さくすると、笛の音はほんとうにもわんもわんになってしまいます。倍音は笛の音を鮮やかに聞かせるために必要です。倍音は聞こえなければなりません、ふだんは聞こえていて構いません。ただ、ときどき耳が痛くなるほど不用意に大きくなるのが問題なのです。

このような「特定の周波数の音が”ときどき”耳に障る」という症状には、マルチバンドコンプレッサが有効です。

私は今回、笛の倍音をコントロールするつもりで本気でマルチバンドコンプレッサを使ってみました。結果は満足しています。鮮明でそれでいて耳に優しい音色になりました。

マルチバンドコンプレッサは、今後もオカリナなど他の笛でも試してみます。まあ……なんだ、いつも「今回の音は今までとは違う!」って言ってる気がしますけどね。

2012年12月31日

インディアンフルート『エンヤ-Watermark』

インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。
インディアンフルートでエンヤの曲『Watermark』を演奏しました。
運指は動画を一旦停止しながら確認してください。

ドレミフルートはほんとうに楽ちん

この作品はドレミフルートで吹きました。
北米インディアンフルートの本来の音階は五音階なので、ふつうの曲を演奏しようとすると、かえって他の笛よりも苦労することになります。

ドレミフルートは、インディアンフルートでもふつうの曲を演奏できるようにと、音階をドレミファソラシドに改造したフルートです。ドレミファソラシドになったインディアンフルートは、もはや単なる縦笛です。英国のホイッスルと大差ありません。あまりに珍し過ぎる楽器は、360度回ってむしろありきたりになってしまうものらしいです。

っても、大ざっぱに息を吹き込んでもきれいな音色で鳴るという、インディアンフルートの特性は健在です。リコーダやオカリナなどコントロールの神経質な笛の演奏者からすると「え、こんなでこの音が出るの!?」と拍子抜けするほど簡単にきれいな音が出ます。今後は「何でもいいから笛を学びたい」という人には、ドレミフルートをお勧めします。音域が狭いのがちょっと不満ですけど。

Voice Of Passion

途中で聞こえる女性の歌は『Voice Of Passion』というソフトウェアシンセサイザの音です。

人の声を演奏するソフトウェアシンセサイザは、『初音ミク』などボーカロイドが有名ですが、これは巷のギター音源やドラム音源などと同じ、サンプリング方式の音源です。「エレーーーエスッ」「トゥリアーーリィアーー」などと歌手が歌ったフレーズを丸ごとサンプリングしてそのまま再生します。

一つの音だけ聞くとさすがにリアルですが、音と音の繋がりが悪いので、速い曲を演奏するとボロが出ます。また自由に歌詞を付けて歌わせることもできませんから、初音ミクのように前面に立ててヴォーカルを担当させることもできません。ちょうど今回の作品のように(なんか後ろで知らない歌を歌ってる……)という雰囲気を作るのに使えます。

ユニゾンの練習をしています

前作から続いてユニゾンの練習をしています。
今まで60本以上の音楽作品を製作しましたが……そういえば今までユニゾンを使ったことがありませんでした。

「ユニゾンとは一つのメロディを複数の異なる楽器で一緒に演奏すること」というのは、もちろん知ってますよ。子供の頃に学校で習いましたから。しかしこんな「リンゴは赤いです」みたいな知識は、音楽のテストでは○をもらえても、現場ではなんの役に立ちません。「そもそもユニゾンとはこういうものだ」という自分なりの得心、「こんなときにユニゾンを使うのだ」という逆引き的な知識が必要です。

今回は、ビオラ・ダ・ガンバが担当している低音パートを強化するために、コントラバスでユニゾンしました。また、ピアノの音の広がりと奥行きを強化するために、ハープシコードでユニゾンしました。ピアノのメロディーラインと低音域を強化するためにシンセブラスでユニゾンしました。

「音の性質を強化するためにユニゾンを使う」というのが、今の私の一つの理解です。
広くは「複数の楽器の音を合成することによる新しい音の創造」だと理解しています。私は子供の頃ずいぶんシンセサイザに熱をあげました。口琴など倍音楽器にも入れ込みました。いかにも私らしい解釈だと思ってます。

ユニゾンは、たくさんの楽器を使った豪華絢爛な音楽作品を製作するために必要な知識だと思ってます。きちんと言葉にできるようになったら説明します。