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2012年10月18日

The church of rock salt

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» 岩塩の教会をモハーヴェの笛で吹いてみました

モハーヴェの笛について

モハーヴェの笛は、北米カリフォルニア半島北方を流れるモハーヴェ川のインディアンたちが1800年代半ばまで吹いていた笛です。木管に4つの指穴を開けただけの簡単な構造で、尺八やケーナのように管の縁を吹いて鳴らします。音階は「ラシドレミ」、黄昏のような暗い雰囲気の音です。
コヨーテオールドマンが復元しました。

”岩塩の教会”について

モハーヴェの笛のために用意した曲です。タイトルは適当。原曲はペルーの山村の小さな教会で歌われていた賛美歌です。原曲…というよりもほとんどそのままで、メロディーのモハーヴェの笛に合わない箇所をちょこっといじっただけ。

Red River Valley (赤い河の谷間)

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» Red River Valley をアナサジフルートで吹いてみました

『Red River Valley』 (邦題『赤い河の谷間』)は北アメリカのゴールドラッシュの頃の古い歌です。元々は砂金を求めてレッドリバーにやってきた白人男たちとネイティブ・インディアンの娘との恋と別れの歌。
日本では北アメリカ西部の美しい自然を謳った歌として、あるいは故郷の西部を懐かしむ歌として知られています。私の世代は小学校の音楽の時間に習いました、今はどうなんだろう。

アナサジフルートについて

笛は古代アナサジフルートを使っています。アナサジフルートは北アメリカアリゾナ州のアナサジ洞窟遺跡から発掘された1400年前の古い笛です。
試聴サンプルの音はアーストーンフルート工房の製作によるB管のアナサジフルート。これは日本の女性向けにわざわざ開発したもので、手のひらの小さな人でも扱いやすいサイズです。また音も出しやすい。

楽譜はGキーで書いています。そうしないと音符が五線の真ん中あたりに収まらないという理由でそうしています。まあどんなキーのアナサジフルートでも運指表のとおりに吹けばいいです。

Wherever You Go

"Wherever You Go"は、インディアンフルート奏者ブライアン・アキパの曲です。CD『The Flute Player』から。彼のインディアンフルート演奏はネイティブな雰囲気を残しつつ、魅力的なメロディーで聴きやすい。私は彼の演奏の多く学びました。

そのままブログにアップすると著作権に引っかかるので、動画にしてYouTubeにアップしました。同じ理由で楽譜や運指表を掲載することができません。

楽器について

モハーヴェの笛で演奏しています。
モハーヴェの笛は、北米モハーヴェ河流域のインディアンたちが1800年頃まで吹いていた縦笛です。北米古代フルートの復元に力を注いでるコヨーテオールドマンが、2007年に発表しました。

尺八のように管の縁を吹いて鳴らす素朴な笛です。指穴は4つ、音階は"ラシドレミ"。誰がどう吹いても黄昏のような哀しい雰囲気になってしまいます。逆にこの限られた音の中で、少しでも明るい雰囲気の演奏ができないかと、私はときどきチャレンジします。

2012年10月19日

冬の星座

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» 『冬の星座』をホピの笛で吹いてみました

堀内敬三作詞の『木枯らし途絶えて…』から始まる唱歌。私が中学生の頃には音楽の教科書に載っていました。原題は『Mollie Darling』(愛しのモーリー)。「モーリー愛しているよ世界でいちばん君が好きさっ。あっふん好き好きさーっ。」という脳天気な歌です…知らなきゃよかった。『麦畑』もそうですけど、犬も食わない恋の歌に格調高い詩をつけて導入した日本唱歌って多いですよね。

ホピの笛

ホピの笛は北米インディアンのホピ族に伝わる縦笛。20世紀半ばまで演奏されていたと伺っています、(今でも祭事に吹いているという話です。)商品として製作しているのは今のところ北米のコヨーテ・オールドマンだけ。コンサートフルートよりも大型の笛ですが、指穴の位置が変則的なので、女性でも無理なく押さえることができるでしょう。尺八やケーナと同じく管の縁を吹いて鳴らすタイプなので習得に鍛錬が必要です。

アメイジング・グレイス

ドローンフルートで『アメイジング・グレイス』を演奏してみました。

インディアンフルートは北米インディアンに伝わる縦笛です。男性が好きな女性にプロポーズするとき歌を捧げる風習から、 ”ラブフルート” とも呼ばれています。ドローンフルートはインディアンフルートの改造版で、通常のメロディー管の横に伴奏管が付いています。同時に二つの音が出る、一人で合奏できる仕組みです。

これは一般的には ”ダブルフルート” と呼ぶのですが、ナッシュは伴奏管に指穴の無い一つの音しか出ないタイプを ”ドローンフルート” 、伴奏管にも指穴のあるタイプを ”デュエットフルート” と呼んでいます。マヤ・アステカのクレイフルートを製作するナッシュは、同様にすばらしいインディアンフルートを製作します。このたび世界楽器てみる屋に卸していただけることになったので、その記念として演奏しました。

もののけ姫

イーグル・ボーン・ホイッスル(鷲の骨の笛)は、死んだ鷲の翼の骨をくりぬいて指穴をあけた笛です。イーグル・ボーン・ホイッスルでジブリ音楽『もののけ姫』を吹いてみました。
運指も載せています、必要であれば動画を一時停止して見てください。

長さは14cm、小さな笛です。鷲がなくような甲高い、哀愁のこもった音がします。北米のインディアンたちはこの笛を、儀式や狩りの合図に、あるいは仕事の合間の楽しみに吹いたのでした。

リコーダーやオカリナと同じで吹けば鳴ります。今一つ不正確なピッチを息の強弱でコントロールしながら演奏するあたりも、オカリナによく似ています。音階はインディアンフルートと同じ音階――ラドレミソラド――なので、高い音のインディアンフルートと思って演奏すればいいです。そもそも最初はふつうのインディアンフルートで試聴サンプルを作りはじめたのですが、あいにく原曲のイメージに合うような高い音のフルートがなくて、代わりに試しにイーグル・ボーン・ホイッスルを使ってみたらぴったりでした。

本物の鷲は絶滅危惧種で、捕らえることはおろか見かけることすら稀になりました。だからこれは実は、陶器製のレプリカです。強い材質ではないので、落とすとペキっと逝きます。下げ紐を首から下げて使ってください、もともとアクセサリです。っても見かけは骨ですから、人間様よりもむしろ犬小屋のワンちゃんに似合いそうで……これは……ファッションを選びます。

もののけ姫

インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。男性が好きな女性にプロポーズするとき歌を捧げる風習から、ラブフルートとロマンチックに呼ばれたりしています。
インディアンフルートでジブリ映画 『もののけ姫』 のテーマ曲を吹いてみました。


使用した楽器について

ナッシュ・タベワという職人の製作したF#管のインディアンフルートで演奏しました。細身で、かちっとした音色です。ブロックに付いているバッファローの彫刻がかわいいです。

運指について

インディアンフルートの運指は、著作権使用料の支払い義務を回避するためにYouTube動画の中でスライドショーしています。動画を一時停止して確認してください。

基本、どこのメーカーのどんなキーのインディアンフルートでも同じ運指です、が。強く吹いて鳴らす2オクターブ目の高い音がメーカーによって微妙に異なります。自分のフルートをどうやって吹けばいいのかは、購入したお店に確認してください。

演奏動画の製作について

CDの曲をBand-in-a-boxに読み込ませてコード進行を逆算させ、自動演奏させた結果をmidiファイルに出力し、録音したフルートの音といっしょにSONARでアレンジ・ミックスダウンしました。

作業環境は、動画を観てのとおりふつうの家の一室です。国道やJRから離れた静かな場所ではありますが、生活ノイズはそれなりで、録音したフルートの音がざーざーと汚れてしまうのはどうしょうもない。ノイズリダクションの使用が必須になります。私はiZotopeRXを使っています。高価なソフトウェアですが、楽器の音をほとんど損なうことなくノイズを根こそぎにクリーンしてくれます。

私の音楽製作作業に於いて、自動伴奏のBand-in-a-boxとノイズリダクションのiZotopeRXは要です。SONARは作業速度がアップし、完成した作品のクオリティがプロレベルまで高くなるため重宝していますが、必須ではありません。やれと言われれば代わりにフリーソフトでも仕事できます、したいとは思いませんが。

ムービー製作はVideoStudio Ultimate X3を使っています。デジタルレコーダーとハンディビデオカメラを同時に回して録音・録画して、あとで音と画像のタイミングを合わせています。VideoStudio Ultimate X3は…ぱっとしません。ムービー製作で必要なことはとりあえず出来ますよ、というレベル。だから問題なく使えることは使えます。

モヒカン族の最後

北米インディアンの笛で映画『The last of the Mohicans』(モヒカン族の最後)のメインテーマを演奏しました。


私は音楽家でなくてエンジニアです

私は自分のことをエンジニア(技師)だと思っています。
私は音楽家ではないし楽器の演奏家でもありません。私の仕事の内容は新商品の発掘と調査、販売企画と実施、使い方をブログで説明したりと、これは音楽家や演奏家の仕事ではないでしょう。私の体感としては、今やってることはコンピュータ会社に勤めていた頃の業務と大差ないです。これはエンジニアの仕事です。

インディアンフルートはそれを取りまく文化の影響で、スピリチュアルな感性と相性がよいです。実際、そういうお客さんが多いです。しかしながら私はその手の話ができないので、いつも申し訳ない応対をしています。あるいはインディアンフルートの縁起として伝えられるロマンチックな逸話があって、なんと絵本になってますけど。ぜんぜん興味ありません、なので読まないし話の詳細も知りません。「演奏が上手になるわけでもないのに、なんでそんなことを知りたいの?」というのが私の率直な感想です。

私の世界は物理的です。
私は楽しんで楽器を演奏しますが、楽器は音にしか興味がないし演奏にしか興味がありません。私にとって楽器はポータブルゲームマシンと同様のモノです。なるほど初音ミクのProject DIVAなど音ゲーは、パーカッションを叩くのとよく似た楽しさを味わえます。またレーシングゲームの楽しさは笛を吹く楽しさに通じるものがあります。

私は楽器を真剣に演奏しますが、心を込めて演奏はしません★ 。
そのような心のこもっていない演奏でも、こうして動画にしてみると、我ながらそこそこ聞けるではありませんか。そのことはむしろ救いだと思うのですよ。「演奏の善し悪しはすべて技術で説明できる」という立場だからこそ、どんな人でも習得しさえすれば楽器を演奏できるようになると、救いの手をさしのべることができると思うのです。

★ 心を込めて演奏しない
そもそも認知学やコミュニケーション論の立場からすると、楽器の演奏――楽器の奏でる音に心をこめることは不可能です。音に心はこもりません。だから音楽教室の講師が生徒に対して「もっと心をこめて演奏して」といった類いのアドバイスするのは、月謝をもらって食ってる身分にしては、あまりに不勉強で横着な態度だと、私は思います。

厳密には「心を込めて演奏する」ではなくて「心のこもった演奏に聞こえるように演奏する」が正しいです。確かにこちらなら、具体的なやり方さえ学べば実践可能でしょう?単なる言い回しの違いにしか聞こえない?、違いがよくわからない?、という人もいると思いますが……これらの二つは天と地ほども違います。

「心のこもった演奏に聞こえるように演奏する」は、楽器演奏の奥義の一つです。これから楽器演奏を始める初心者にぜひ理解させたい事柄です。

聖母マリアの七つの喜び

1人で合奏ができるダブル・インディアンフルートです。
『聖母マリアの7つの喜び』を演奏しました。
運指は動画を一旦停止しながらご確認ください。
» カラオケ音源を用意しました、使ってください。

曲について

『聖母マリアの七つの喜び』は古い歌なので、メロディーの異なるバージョンが存在します。私が初めて聞いたのはアイルランドのドネゴール郡に伝わるバージョンでした。静かで神聖な雰囲気の曲で、一発で気に入りました。しかしながら世間で知られているのはむしろ、スィング気味の脳天気な曲調のバージョンです。それを知っている人は(なんでこんな曲をインディアンフルートで吹くのだろう?)と敬遠するかもしれません……今回は非常に損な選曲をしてしまいました。

七つの喜び、ということはご明察のとおり、1番から7番まで歌があります。とはいえ笛で同じフレーズを7回もくりかえすとさすがに飽きるでしょうから、4番までしか演奏してません。

楽器について

アステカ族の末裔、ナッシュ・タベワが製作したダブル・インディアンフルートで演奏しています。

インディアンフルートは北米インディアンに伝わる笛です。ダブル・インディアンフルートはそれの改造版で、2本の笛を1本に束ねた笛です。同時に2つの音を出せるので1人で合奏ができます。石器・土器しかなかった昔のインディアンたちがこんなゴツい笛を吹いていたはずもない。ダブル・インディアンフルートは高い工業技術によってのみ製作可能な、20世紀末に生まれた新しい楽器です。

……なんて堅苦しいことを言わずに、吹いてみると意外にこれがインディアンな雰囲気なのですよ。インディアンフルートを嗜む人なら(一本は欲しいな)と憧れる楽器です。

演奏方法について

『聖母マリアの七つの喜び』の運指は演奏動画に載せています。一時停止しながらご確認ください。

左側の管は、6つの指穴ぜんぶを使います。レザーバンドは外してください。右手側の管は、下の2つの指穴しか使いません。3つあるうちのいちばん上の穴は、耳栓で塞ぎます。

動画を見てのとおり、右手で左右両側の管の指穴をいっしょに押さえる箇所があります。なので同じダブル・インディアンフルートでも、枝切りハサミのようにAの形になっているタイプでは演奏できません。

『聖母マリアの七つの喜び』の曲自体は、短くて覚えやすい易しい曲です。ふつうのインディアンフルートで吹いてもいい感じですよ。

作品について

製作途中に(なんだかヴァンゲリスみたい……)と意識した瞬間、変なスイッチが入ってしまって「ヴァンゲリスならこんな音を使うよね」「ここはこんな感じにするよね」とますますヴァンゲリスっぽくなってしまいました。

おかげで曲のインパクトを表現する新しい方法を学びました。
今までは楽器の音を大きくすることで表現していましたが、今回は楽器の数そのものを増やして表現しています。今まではドラムやピアノの音をばあんと強く鳴らしていましたが。今回は「じゃーん」「どどぉおん」と別の大きな音を追加することで表現しています。

ユニゾンも、実は今回やったのが初めてです。
思いかえしてみれば、過去に一度もユニゾンをやったことがなかったのでした。

このへんの知識は、たくさんの楽器を使ってシンフォニックな表現をするのに重要な気がします。次回作でも引きつづき研究してみます。

製作ノートは製作中に書くもの

この文章は伴奏が出来上がった段階で、ファミレスで食後のコーヒーを飲みながら書きとめたものです。今までは作品に関する説明などは、演奏動画をネットに投函した後になって考えていました。しかしそれだと気持ちはもう済んでしまった事になっているので、どうにも頭が回りませんでした。このように、製作工程の途中途中で気づいたことを書きとめておけばよかったのです。

テルーの唄

イーグル・ボーン・ホイッスルは北米インディアンに伝わる鷲の骨で出来た笛です。イーグル・ボーン・ホイッスルでジブリ映画『ゲド戦記』の曲『テルーの歌』を吹いてみました。
運指も載せています。動画を一時停止しながら確認してください。
» カラオケ音源を用意しました、使ってください。

イーグル・ボーン・ホイッスルはコンサートピッチではありません。私の持っている笛はC#少し高めピッチですが、他の笛はまた違っているでしょう。伴奏はMIDI打ち込みで鳴らしていますから、どんなピッチでも問題なしですが。現実のピアノで伴奏するのはつらいと思います。微細なチューニングができる電子キーボードやギターで伴奏することをお勧めします。

録音した笛の音は聞こえにくい

笛の音は純度が高い(倍音が少ない)ので、録音すると聞こえにくくなります。スペクトラムアナライザを見ながら音量を調節すると、伴奏に埋もれて聞きとりづらくなります。よく聞こえるように調節すると、今度は聞いているうち耳が痛くなってきます。イーグル・ボーン・ホイッスルのように甲高い音の笛は、いっそう音量バランスを取りにくいです。音楽作品で笛の音をきれいに聞かせることは、私の初期の頃からの課題です。ピースの足りないパズルを完成させるような努力を延々と続けています。いろいろ分かったら別の記事で説明します。
正直、人間の声の高さに近い楽器が音量バランスを取りやすいです……

間奏に入る風の音について

間奏とエンディングに風の音が入ります。他にも尺八のような音や鐘の音などいろいろ重ねて、映画のワンシーンのような印象を表現してみました。

技術的には至極簡単でした。Forest KingdomというVSTiと使えば誰でもできます。ファンタジー系音楽を作るためのスタータキットみたいなVSTiでして、最初からこのような出来合のプリセットがたくさん用意されています。それを一つ一つ順に当てはめて鳴らしてみて、いちばんふさわしい音(風の音系)を選んだだけです。